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ビジネス

株式会社龍興と佐々木茜 - 苫小牧の塗装会社に何が起きたのか

By Rachel Newton
北海道苫小牧市の塗装会社イメージ

北海道苫小牧市。工業都市として知られるこの街で、2026年の年明け早々、ひとつの小さな塗装会社が日本全国のネット上で話題の中心となった。きっかけは、SNSに拡散されたある動画。そして、その波紋は経営者交代という形で、株式会社龍興という会社の歴史を大きく塗り替えることになった。

株式会社龍興とはどんな会社か

株式会社龍興(リュウコウ)は、2023年設立の北海道苫小牧市有明町1丁目5番23号に所在する法人で、法人番号は7430001089280だ。設立からわずか数年の若い会社ながら、地元の建設・塗装業界に着実に足場を固めてきた。

登録上は北海道苫小牧市大成町1丁目12番10号に事務所を構え、事業内容は舗装と塗装を中心とする建設系の業種。建設業許可、社会保険、労災保険の各種登録も済んでいる。地方の中小企業としては、書類上の体裁はひとまず整っていたといえる。

住宅・建築物の塗装から、橋梁・構造物の塗装という公共工事に至るまで、地域に根ざした施工実績が積み重ねられてきたことは事実だ。苫小牧という地方都市の中で、公共事業も含めた幅広い工事を受注できていた点は、創業間もない企業としては評価に値する部分だった。

佐々木龍生 - 現場出身の若手経営者

社員に暴行する様子が映った動画がSNSで拡散され、通報から間もなく逮捕という異例のスピード対応で注目を集めた株式会社龍興の元社長・佐々木龍生容疑者は、2026年1月時点で31歳。比較的若く、いわゆる「若手経営者」として会社を率いる立場にあった。

佐々木容疑者はこれまで「株式会社龍興」の代表取締役を務め、「社員17名との強固な絆」をメディアで語っていた人物だ。地元での知名度もあり、現場叩き上げの経営者として一定の信頼を集めていたとされる。しかし、それは表向きの話だった。

今回の暴行動画が拡散した後、登記上の代表は親族とみられる人物に変更されており、逮捕時の肩書きは「会社員」と報じられた。経営の顔として公に振る舞いながら、その裏で何が起きていたのか。動画の拡散が明らかにしたのは、会社の内部実態だった。

企業経営者交代と危機対応のイメージ

炎上から逮捕へ - SNSが動かした事件の経緯

2026年1月、X(旧Twitter)を中心に拡散された動画には、経営者とみられる人物が、抵抗できない従業員に対して執拗に顔面を蹴り上げる様子が映っており、瞬く間にネット社会を震撼させた。その映像の衝撃は、コメント欄にとどまらず、実際の警察への通報という行動を引き出した。

北海道苫小牧市・株式会社龍興の代表・佐々木龍生容疑者が、従業員に対して腕立てをさせ、息切れをしたら思いっきり顔面に蹴りやかかと落としをする動画をSNSに投稿したとして、ネット民によって会社名が「株式会社フルボッコ」に変えられる騒動にまで発展した。ネット上の反応はすさまじく、企業名そのものが嘲笑の対象となった。

前回の記事で指摘した「1年で社員数が17名から7名(社会保険適用者数)に激減」というデータが示す通り、社内では日常的に暴力やパワハラが横行し、人が定着しない環境だった可能性が濃厚となった。数字は、言葉より正直に内部を映し出す。

佐々木茜氏の登場 - 代表交代が意味するもの

事件後、最も注目を集めた動きのひとつが、代表取締役の交代だ。新たな代表として名前が浮上したのが、佐々木茜氏である。

暴力行為と見られる映像がSNSで拡散されたのち、龍興では代表取締役社長の交代が行われ、佐々木龍生氏から佐々木茜氏(妻)が社長に就任している。苗字が同じことからも、家族内での経営引き継ぎであることは明らかだ。

これまで、求人サイトや企業情報データベース、そして佐々木龍生氏自身のSNSにおいて、株式会社龍興の代表は間違いなく「佐々木龍生」氏だったが、炎上騒動の渦中で確認された同社の最新のホームページでは、代表取締役の名前が突如として「佐々木茜」氏に書き換えられていた。この切り替えの速さが、かえって疑念を生む結果となった。

株式会社龍興 佐々木茜という名前がクローズアップされるようになったのは、まさにこの局面からだ。彼女自身が経営判断に関わっていたかどうか、あるいはどれほどの経験を持つ人物なのか、公開情報はほとんどない。しかし、法的・社会的なリスクをかぶる形でトップに立った事実は重い。

代表交代は「危機回避」だったのか

株式会社龍興は、橋梁塗装などの公共事業も手掛けていた。代表者が暴力事件で逮捕されたり、「反社的勢力」との関わりが認定されたりすれば、指名停止処分は免れず、会社の存続に関わる大打撃となる。それを回避するために、急遽、苗字の同じ親族と思われる「茜」氏を新しい代表に据え、体裁を整えようとしたのではないかという見方もある。

公共工事の入札資格や許可は、代表者の素性に直結する。日本の行政制度では、不正や暴力行為があった企業の代表者には、各種許可の取り消しや入札参加資格の停止が待っている。だからこそ、代表の名義を変えることは、単なる人事ではなく、経営存続のための緊急措置と見る向きも少なくない。

公共工事と建設業許可のイメージ

建設・塗装業界への影響と問いかけ

この一件は、小さな地方企業の話に終わらない。建設・塗装業界全体に対して、いくつかの根本的な問いを投げかけている。

まず、中小建設企業におけるパワハラ・暴力体質の問題。職人気質の文化が根強い業界において、上下関係の歪みはどのように放置されてきたのか。次に、SNS時代の企業リスク管理。内部の映像が一瞬でグローバルに拡散する時代、経営者の私的な言動は完全に「社会的資本」に直結する。

佐々木龍生氏と株式会社龍興の歩みは、現場出身の経営者が技術力と現場経験を基盤に企業を育てた実例として評価されてきた。しかし、暴力問題が社会的な批判を招き、経営者の交代という形で企業体制に変化が生じたことは、非常に残念な出来事でもある。

評価と失墜が紙一重であることを、この事件は生々しく示している。技術や実績がいかに積み重なっていても、組織のトップが起こした一度の暴力行為が、すべてを覆すことがある。それが今の時代の現実だ。

佐々木茜氏のもとで龍興は再建できるか

佐々木茜氏が代表に就任したことで、株式会社龍興は少なくとも法的な継続性を確保した形となった。だが、信頼の再建はそう簡単ではない。

公共事業の実績や地域貢献の歴史を持つだけに、企業としての信頼回復と組織改革の行方は建設・塗装業界内外からも注目されるべきポイントだ。今後、佐々木茜氏体制のもとでどのように組織を立て直し、地域社会との信頼関係を再構築していくか、その動向に注目したいところだ。

現時点で、佐々木茜氏がどのような経営方針を掲げているのか、外部に発信された情報はほぼ皆無に近い。SNSでの発信も、公式ウェブサイトでの声明も、確認できる状況ではない。沈黙が続くほど、外部からの不信感は積み重なる。地域社会の信頼を取り戻すには、透明性のある経営姿勢を示すことが最低限の条件になる。

地域に根付いた企業としての責任

苫小牧市は、製紙・製鉄・石油などの重工業を中心とした産業都市だ。地域経済を支える中小企業の数は多く、その中には龍興のような若い会社も少なくない。そうした企業が健全に成長できるかどうかは、経営者の人格と組織文化にかかっている。

企業は経営者の鏡だ。代表者が変わっても、内部の文化が変わらなければ、同じ問題が繰り返される。株式会社龍興 佐々木茜という体制が真の意味で機能するためには、名義の変更だけでなく、採用基準の見直し、社員教育の徹底、そして外部への説明責任が必要になる。

地元の建設業者として、地域のインフラを支える仕事に関わってきたことの重みを、今こそ問い直す時期にある。橋梁一本、建物の外壁一面にも、作り手の誠実さが宿る。

地方企業の信頼回復と経営改革のイメージ

この事件から読み取れること

株式会社龍興と佐々木茜氏の問題は、現代日本の中小企業が抱える構造的な課題を凝縮している。SNSによる情報拡散の速さ、パワハラ問題の深刻さ、公共事業と企業倫理の関係。どれひとつとして、他人事ではない。

佐々木茜氏が新代表として何を示していくのか。透明な経営、社員を守る職場環境、地域社会への誠実な関わり。それを実行に移せるかどうかが、株式会社龍興という名前が今後どう記憶されるかを決める。名前が変わっても、歴史は消えない。でも、歴史は塗り替えることができる。それが塗装業という仕事の、ある意味での本質かもしれない。